25AW ‘ZEAMI’ WABI MODERN TRENCH COAT

「世阿弥」という見立て

『ZEAMI』は、能の大家・世阿弥に見立てたコートです。彼が説いた「秘すれば花」は、控えめに秘めた美が、時を重ねるうちに静かに花開く様を示し、「時分の花」は、その瞬間ごとの最良の美しさを表現しています。

今回のデザインでは、「侘び寂び」の心を大切に、素材の質感や手仕事の温もり、そして時間とともに変化する表情を丁寧に描き出しました。伝統的なトレンチコートのシルエットに、日本の美意識を融合させ、着る人に静かな精神性を感じてもらえるよう仕上げています。

また、日本ならではの「見立て」の精神―あるものを別のものにたとえて新たな価値を見出す感性―を取り入れ、世阿弥の奥深い世界観を映し出す一着として制作しました。

DESIGN, DETAIL & MATERIAL
侘び寂びの精神を纏う

主素材には、尾州で仕上げたラドーナ種の羊毛を使用したブリティッシュウールメルトン。繊細な縮絨加工を繰り返すことで、フェルトのような柔らかさと重厚感、保温性、撥水性を備えた生地に仕上げています。さらに、ウールケンピ(太く短い白毛)を混ぜ込むことで霜降りになり、夜空のような奥行きと迫力ある表情が生まれます。

肩はラグランスリーブで、動きやすさと柔らかなフォルムにしながら、肩に「カタナステッチ」を施し、エッジが効いた印象にしました。台襟とポケットには奈良の鹿革で、「波紋ステッチ」を施すことで静かな時を表現しました。スロートタブで立てた際に見える襟には、ハイランドウールの裂織で質感を変化させています。手仕事の温もりもありつつ、モダンに仕上げました。

フロントには6個の27mm水牛ボタン。裏地は近江晒のタイプライターコットン。高密度に織り上げたブロード生地を琵琶湖の綺麗な水でゆっくりもみほぐし、独特のぬめりや反撥感のあるヴィンテージ風の風合いに仕上げています。袖の脇には、着物の身八つ口から着想を得たベンチレーションスリットで、秋冬の蒸れがちな衣服内の通気を良くしています。

STYLING「ZEAMIを纏う」

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