2025年秋、フランス最古のデニムメーカー「Atelier TUFFERY(アトリエ・テュフリー)」とTOKIARIのコラボレーションが静かに始動しました。
その背景には、伝統と持続可能性をつなぐ深い対話があります。
10月には京都・時在服飾設計にてコラボレーションデニムの発表と、ポップアップショップを開催予定です。
ここでは、Atelier TUFFERY 広報の大和田さんと交わした言葉を通して、このプロジェクトの本質を辿ります。
Atelier TUFFERY デニムに宿る記憶と歴史
TOKIARI 中村
大和田さん、よろしくお願いいたします。
まずは、アトリエ・テュフリーの歴史からお伺いさせてください。
Atelier TUFFERY 大和田さん
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
アトリエ・テュフリーは、1892年、創業者であるセレスタン・テュフリーが仕立て屋としてデニムワークウェアを作り始めたのが始まりです。

創業者セレスタン・テュフリーさん
中村
フランスで一番古いデニムブランドとお聞きました。創業1892年ということは、現在2025年で133年の歴史がおありですよね。
大和田
はい。
デニム発祥の地ともいわれる、フランス南部の街、ニーム ( Nîmes ) は17世紀ごろから綾織生地の産地でした。当時はサージ ド ニームと呼ばれ、後にデニムになったといわれています。セレスタン・テュフリーは創業当初からニームのデニム生地を使っていました。
フロラックは、セヴェンヌの山々に囲まれた自然豊かな村で、現在もアトリエはフロラックにあります。

フロラックの雄大な自然
中村
フランス南部のセヴェンヌ山脈の山間の村フラックから、65kmほど離れた南仏の街ニームまで生地の買い付けに行っていたのですね。
その時期って、あのリーバイスの歴史とかぶる頃なんですか?
大和田
アメリカのジーンズの歴史とは、ちょっと時差がありまして、ジーンズのファイブポケットの型が出来上がったのは、アメリカだそうです。(リーバイスは1859年創業)
当時、フランスのニームで作っていた生地を、イタリアのジェノヴァ港からアメリカに輸出していて、その生地で作られたのがファイブポケット、ジェノヴァ港の名前がジーンズの語源ともいわれています。
中村
へぇ、そうなんですね。
大和田
創業時、セレスタン・テュフリーが作っていたデニムウェアは、いわゆる作業着なので、今のファイブポケットの形とはちょっと違うみたいです。
南フランスのニームでは19世紀ごろにはデニム生地産業が盛んだったので、セレスタン・テュフリーはその生地を使ってワークウェアを仕立てていました。
中村
なるほど。
石炭を掘る人に向けたワークウェアですね。
日本でも、炭鉱業が急速に発展していた時代ですね。
大和田
はい、まさにそうです。
ちょうど、フロラックから20kmほどのところにアレス ( Alès ) という鉱山の町がありまして、そこの鉱山で働く人たちの作業着を作っていたそうです。

鉱山で働く人たちの仕事風景
中村
作業着は動きやすさと頑丈さが重要ですね。
手に入れやすい素材でコストパフォーマンスもよく、作りやすいわけですよね。
ちなみに、ジーンズの語源ですが、「ジェノヴァ」から訛っていって、ジェーン、ジェーンズ、ジーンズになってたんですか?
大和田
そのような説もあるみたいです。
フランス語の「de Gênes(=ジェノヴァ産)」が「ジーンズ(jeans)」の語源ともいわれています。
デニム(denim)は、フランスのニーム(Nîmes)で作られた「sergé de Nîmes(ニーム産のサージ織物)」が語源とされています。
中村
なるほど。
語源を辿ると面白いですね。
大和田
イタリアは今でもデニムの生地メーカーさんがたくさん残ってますし、アトリエ・テュフリーでもイタリアの生地も使ってますよ。

フロラック ー ニーム ー ジェノヴァの道のり
技術を継承し、地元と共に生きる
中村
資料でいただいた、セレスタン・テュフリーさんのセピアカラーの写真がすごく印象的で。お店の前でご家族で立っている写真。さすが仕立て屋さんだけあって、みんなお洒落だなぁって思って見てました。
その頃って、もうなんだろう、、、そんなにそういうお店はまだあまりなくて、鉱山の仕事でニーズがものすごく生まれて、うわーって盛り上がったっていう感じなんですか?
大和田
そうみたいです。
フロラックの村に、先代がどのようにたどり着いたのか、まだ深く聞いたことはないのですが、セレスタン・テュフリーは既に仕立ての技術を持っていたそうです。
当時は仕立てができるということはとても貴重で、希少でもあったので、地元のお客様に人気があったそうです。

創業者セレスタン・テュフリーさんとご家族
中村
そうですよね。
その頃、仕立ての腕があるというのは大きいですよね。
大和田
そうですね。地元の人たちと一緒に成長していこうという精神は、脈々と創業者から受け継がれています。
他の製造メーカーがコスト削減のために海外生産に移行した時代も、フロラックでつくるフランス製にこだわり、クラフトマンシップを守り続けてきました。
職人の技術の継承と同時に地元の人たちの生活、職を守り共に生きる選択を大切にしてきました。
現在四代目となるオーナーのジュリアンとミリアムも、まずは作る技術を継承することを守り続けていますね。

フロラック村のアトリエ・テュフリーのスタッフさんたち
中村
そこはぐっと堪えて。
まずはつくる、技術を伝えていくという。
アトリエ・テュフリーさんには、ずっと一貫して、「地元とともに生きる」という姿勢がありますよね。
大和田
そうですね。
作り手を守り、価格を誠実に
大和田
自社のSNSでも公開しているのですが、フランスでの税抜販売価格の70%は製品をつくるための費用になっています。製造業の中では非常に高い率です。
中村
それは、人件費も含めて、ものづくりに関わるすべての費用が価格に対して70%なんですか?
大和田
そうですね。
税抜き価格の70%が製造費です。
中村
おぉ、、、すごい(高い)ですね。
すると、価格はかなり抑えられていますよね。
お客さまに届けるための販売は、どのようにしているんでしょう?

ひとつひとつ丁寧に縫い上げていく
大和田
なので、自社で季節ごとにセールを行うことはなく、年間通して安定した価格で、お客様に直接販売するかたちを主に取ってきました。
主な販売拠点は、フロラックのアトリエと併設したブティックと、モンペリエの直営ブティックです。
その他には、フランスの主要都市で定期的に企画されるポップアップストア内とオフィシャルオンラインショップで販売しています。
でも、近々大きなアクションがありまして。
今年の秋ごろ、パリのマレ地区に直営店がオープンする予定です!
中村
おぉ〜、マレですか!
いいですよね、街の雰囲気がね。
大和田
そうなんです。
マレ地区は、おしゃれな人たちが集まる界隈ですよね。
中村
うんうん。
マレ周辺はバイヤー時代によく通いましたので、思い出がたくさんあります。
じゃあ、いよいよ、さらに変わってきそうな感じがしますね。
大和田
そうなんです。
パリ初のマレの直営店は、お客さまと向き合い直接販売する機会を増やしたいという思いが、一つの形になりました。
中村
マレの直営店は楽しみですね。
いつか行ってみたいなぁ。

2019年の中村 マレ地区の東隣のバスティーユ広場にて
中村
でも、より多くの方に伝えたいと思うといろいろハードルもあり悩みますよね。私もパートナーの高橋ともよく話しをするんですけど。
大和田
そうですね。
中村
そう、難しいですよね。
そのぶんコストがかかるので、価格がちょっと⾼くなってしまうっていう。
大和田
そうですね。
素材にもこだわって、ものづくりに携わる全ての方々にちゃんと見合う額をお支払いしていくと価格は高くなりますね。
でも、職人を守るというのはとても大切なことですから。そこをしっかり守ることで、価格への誠実さが問われますので。
中村
そうですね。
企業努力されていますよね。

職人を守りつつ、誠実な価格を
「流れ作業」ではなく「マルチスキル」
大和田
アトリエ・テュフリーの製造に携わる職人はみんな正社員なんです。
全てのスタッフは、全工程が縫えるように14ヶ月間の自社研修を受けます。
中村
それはすごい。スタッフ全員が正社員なんて。
なおかつ、全ての工程を縫えるとは。
徹底していますね。
大和田
一般的な縫製作業は、流れ作業で、ひとりが同じ作業を長時間繰り返すのですが、それではスタッフの体に良くありません。
なのでアトリエ・テュフリーでは、1時間の間に数回、作業の機械を変え、移動することで同じ体勢を続けない作業工程になっています。
中村
うんうん。
たしかに、リフレッシュもしそうです。
大和田
みんなが全部の工程をできるので、誰かが急にお休みしても作業が止まることはないですし、スタッフが好きな時に交代でバカンスが取れます。
中村
ヨーロッパはバカンス大切にするイメージです。
自由に取れるのはいいなぁ。
じゃあ、常にひとり1本作ろうねっ、ていうスタンスなんですか?
大和田
いえ、主に週ごとに作業工程が計画されています。
中村
ボリュームのある分業のラインが何個かあって、ローテーションで組んでいくっていう感じですかね。
大和田
そうです、そんな感じです。
「流れ作業」という言葉は使いますが、実際にはまったく流れ作業で働いているわけではありません。「マルチスキル」という意識で作業しています。

パターンを背景に生地をカット
中村
私も、国内の工場を何社か見学させていただいたんですけど、ものすごく分業化されていました。
そこからさらに細分化されて、ひとりひとりディテールにフォーカスした作業をしていました。縫製、アイロン、検品と。
まぁ、すごいスピードでした。
大和田
うんうん。
中村
ある工場さんでは、大きな電光掲示板に時間が刻まれてて。目標に対しての時間が毎秒毎秒カチカチって出るんですよ。みんな脇目も振らず各々の作業をこなしている。
もうアスリートです。緊張感もある。こっちが勝手にイメージしているものづくりとは大きく違っていて驚きました。
機械的ではあるのですが、引きで見ると、工場がひとりの巨人の職人のように思えてくる。仕上がった製品のクオリティーは素晴らしくて、それは胸を打つものがあります。
私の見学した工場さんは、かなりボリュームがある生産をしていますし、日本らしい集団的な時間軸で進めていると思います。
大和田
そうですね。
中村
一方、アトリエ・テュフリーさんは、一点物とかのアトリエではなくて、ある程度のボリュームを作られている工場で、個人の自由を尊重しつつ、働く人の環境も考えている。それは、非常にヨーロッパ的なおおらかさでもありますし、憧れもあります。
大和田
アトリエ・テュフリーのアトリエではみんなリラックスして笑顔で働いているんですよ。毎朝みんなで体操の時間があって。日本でいうラジオ体操みたいに交代制でひとりひとり、5分ちょっとくらい、自分たちが提案するストレッチをやって。そこから作業に入るっていう、朝ルーティンがあります。

アトリエでは、みんながリラックスして笑顔
中村
ここでそれができるっていうのは、定番品のある程度決まった形のジーンズだから可能っていうのもありますよね。
これをある程度大きなボリュームの量産で毎回デザインが変わるプレタポルテだったら、難しいかもしれない。自由度を高くしていくというのは。
大和田
そうかもしれませんね。
縫製経験ゼロで入社し、14ヶ月間の研修を受けて働くスタッフもいます。
それと雇用の際、履歴書を見ないというのが社長の考えで、私たちのコミュニケーションは手と手なので。学歴とかは問わないそうです。
中村
うん、その姿勢は格好いいですね。
僕も行こうかなぁ。(笑)
大和田
はい、ぜひ。(笑)
四代目がもたらした革新
大和田
現在の4代目オーナーのジュリアンは、小さい頃からアトリエに出入りしていたので、ものづくりを自然に学んでいきました。3代目のジュリアンのお父さまと叔父さまは、現在もアトリエで新しい職人たちに技術を継承しながら一緒に働いています。
ジュリアンは、やがて経営学を学びに外に出て、パートナーであり妻となるミリアムと出会ったそうです。
中村
そこでお二人は出会うんですね。

四代目オーナー、ミリアムさん(左)ジュリアンさん(右)
大和田
その後、一般企業で経験を積んだのち、やっぱり「自分たちの家族が持つ職人技を未来に継承したい」と決心したふたりはフロラックに戻り4代目のオーナーになったそうです。
中村
なるほど。
ジュアリアンさんとミリアムさんの経営の知識と、外の世界を見て戻ってきたわけですからね。
HPを拝見して、今の時代の潮流となっているSDGsを意欲的に取り組んでいる印象を受けました。
初めてアトリエ・テュフリーさんの、セレスタン ( Célestin )のウオッシュブルーデニムを拝見したときは、すごくフランスっぽいなぁと。ブルーの色が柔らかく綺麗で。
ベルトループにちょこっとトリコカラーのテープがあったりしてね。メイドインフランス、というプライドを感じました。
大和田
ありがとうございます。
中村
シルエットも洗練されたスリムストレートで誰にでも似合うシルエットだなぁと。履いた時に脚に触れる生地のタッチも気持ちいい。シンプルでいいデニムだなぁと感じました。


アトリエ・テュフリーの定番モデル、セレスタン
Célestin


ニュールック
Men: Alphonse / Women: Augusta
Atelier TUFFERY
裂き織りがつなぐ、二つの精神
中村
でも、私たちとしては、このままのデニムを販売するのもいいのですが、TOKIARIで取り扱うのであれば、コラボレーションしませんか?と。
大和田
そうでしたね。
中村
今季の25AWから、残布を再利用した裂き織りをディテールに落とし込む試みを始めていたので、デニムに取り入れられないかと私が打診したんですよね。
アトリエ・テュフリーさんでは、古着ジーンズのリユースの取り組みもしていましたし、なにか繋がる気がしていて。
その裂き織りのアイデアに関してはどんな印象をうけましたか?
大和田
そうですね。
中村さんから、裂き織りの素敵なアイディアをいただいた後に、ジュリアンとミリアムに日本の裂き織りの文化を詳しく説明しました。
そして、裂き織りは日本の伝統工芸のひとつでもあり、貴重だった布を最後まで大切にする東北の生活の中から生まれた文化だと説明したら、彼らも「それはとても素晴らしいですね!」と感動していました。

TOKIARI 25AW ZEAMI COAT / 襟部分を裂き織りに (モデル ふくしひとみ)
中村
それは嬉しいなぁ。
大和田
そんなタイミングで、オーナーの友人でアーティストのフランソワさんとマリーンさんが今年の8月から京都九条山のアートレジデンス、ヴィラ九条山で創作活動をすることになり、京都でのアートイベントにアトリエ・テュフリーも参加するお話がありました。
これはとても良いご縁になるとのことで、オーナーのジュリアンとミリアムと一緒に今年の10月に京都に行くことになりました。
中村
お声がけしたタイミングも良かったんですね。
アトリエ・テュフリーさんのHPを見て、デニムを次の人に受け渡す橋渡しみたいなこともされていたので、徹底してるなぁと思ってました。
大和田
はい、循環させることを徹底してますね。
お客さまが履かなくなったデニムを回収し、セカンドハンドとして販売し廃棄ゼロの取り組みをしています。
また、傷んだアイテムのの修理もしています。お客様には、「新品を買うより、古いものを修理してください」ともお伝えしています。

循環するアトリエ・テュフリーのデニム
中村
私たちもそういう活動を違う形では実践しいるところでして。毎回コレクションを少しづつですけど、作ったりしていますが、制作の際に出る余り布があって。なるべく残布は出さないような形づくりではやってるんですけど、やっぱりどうしても出てしまうものなので。
その残布を貯めておいて、まとまったきたら岩手の裂き織り工房の幸呼来Japanさんに願いして。私の故郷ですし、幸呼来さんの活動も応援したい気持ちがありますので。
そこで新しく生まれ変わった布として、ディテールで加えるっていう感じで。でも、服に取り入れる場合、そこはうまくバランスを持ってやらないと、懐古趣味を切り取っただけみたいになっちゃう気がしていて。
大和田
うん、うん。
中村
私の地元の岩手では、裂き織りやホームスパンなど、手織の作品が身近にたくさんあります。草分け的存在の光原社さんなど名店もありますので。
どれも表情のあるテクスチャーで、すごく手のぬくもりを感じるし、静かな精神性が宿っているのは昔から感じていて。でも、若い頃はあまりピンとは来ていなくて。
私は盛岡で20年ほどセレクトショップをやっていたのですけど、、、その頃、2017年ごろですかね。民藝的なものをはじめとして、漆器、盆栽などに強く惹かれるようになって、お店でも紹介していました。
そのあたりからですね、こういう織などにも興味を持ち始めたのが。

2017年 中村の盛岡でのショップ ‘RiZM CLOSET’
中村
私が作る服では、脈々と続く伝統工芸を細部に取り込んで、モダンに昇華したいっていう気持ちです。その想いが、長い時を経てようやく形になったと思っています。
そして今回、アトリエ・テュフリーさんとのコラボで、デニムポケットを裂き織りでやれたらいいなっていうので。作り方を考えると、最初はオーダー制からになるかと。裂き織りの時間もかかりますので。
大和田
そうですね。
受注生産という体制は私たちの取り組みにとても沿っていると思います。アトリエ・テュフリーでは常に過剰生産はせず、最低限のストックのみを持っています。
なので、プロ用のオーダーだけではなく、個人のお客さまのオーダーでも場合によっては少しお待ちいただいてお届けすることもあります。
はじまりはポケットから
中村
今回、あのポケットのディテールで浮かんだアイデアがあって。当初は、ただペタッと叩きで四角に貼り付けるアイデアだったんですけど、それだとあんまり芸がないなって、ぼんやりと思ってて。
ある日、アトリエ・テュフリーのポケットを眺めていたら、あれ?ステッチじゃなくて、上下ちゃんと分かれている!って今更気づいて。(笑)
パタンナーの北村さんと、その下部分に裂き織りをやりたいねっていう話になったんですよ。
大和田
気づいていただけて嬉しいです!
アトリエ・テュフリーのバックポケットは、工具などを入れて傷ついたポケットの下の部分だけをリペアできるようにデザインされているんです。
中村
あ!あのポケットってそういう意図があるんですか?
大和田
そうなんです。
中村
おぉ〜、そうか!
工具を入れていうるうちに破れるんだ。ポケット上部のかんぬき部分はそのままにして、下の破れた部分だけ変えれる、と。なるほど。なんでこれ分けられているんだろう?と思っていて。デザインの遊びなのかな、ぐらいにしか考えてなかったんですけど。
大和田
下の部分だけリペアできるように考えられたデザインなんです。
中村
素晴らしい。
そもそもがワークウェアから始まっていますしね。

傷んだ下の部分だけリペアできるようにデザインされたバックポケット
大和田
今回の時在さんとのコラボも、そもそもの始まりがポケットでしたね。
中村
そうでしたね。
Tポケットと裂き織りと2つご提案させていただいて。
この企画の話をしている2ヶ月後の26SS展示会には間に合わせたい、でも裂き織りはスケジュールギリギリでしたので。
おかげさまで展示会には、Tポケットをお披露目することができました。右にTOKIARIのイニシャルの’T’ポケットにロゴ刺繍、左にAtelier TUFFERYのオリジナルポケットで。
でも、やっぱりヒップポケットは左右対称が美しいと思い始めてて。ヒップは視覚効果が大切な場所ですし。大概やってみてから気がつくんですけど。
とはいえ、記念すべきコラボレーションのファーストモデルなので、思い入れもあります。
これは、バージョン1.0.0としてリリースします。


TUFFERY×TOKIARI コラボレーションデニム
左:Ver 1.0.0 / 右Ver2.0.0
会話から生まれるサステナブル
大和田
私は、時在さんとアトリエ・テュフリーのものづくりへのこだわりには共通点が多いなと感じています。厳選した素材選びや、タイムレスでジェンダーレスなデザイン、そして必要以上にものづくりをしないというサステナブルな取り組みなどです。
中村
ありがとうございます。
嬉しいです。(笑)
私も、アトリエ・テュフリーさんの企業姿勢を尊敬していますので、そう言ってもらえると、とても励みになります。
大和田
サステナブルという言葉でまとめてしまうと、少し一般的になってしまいますが、アトリエ・テュフリーでは、些細なことでも、「この選択は本当にこれで良いのか?」と疑問を持ち、チームで話し合い、より良い方向に進めるように日々努力しています。

疑問を問いながらベストの方向へ
中村
そのサステナブルな取り組みをもうちょっと聞かせてもらえたら。
大和田
例えは、アトリエ内で出る糸くずや裁断くずは全て定期的に回収され、建築資材に使うための加工工場に運ばれます。
中村
それって建築資材になるんですか?
大和田
そうなんです。なのでほとんどゴミはゼロです。製造するアイテムも必ず売れると確信できるものだけなので何も捨てません。
さらに、アトリエ・テュフリーのデニムは、一般的な同重量のグローバル生産デニムと比べて、CO₂および温室効果ガスの排出量が3分の1であることがわかっています。

自分だけのビスポークジーンズも制作する
中村
おぉ、、、そうなんですね。
リサイクルの姿勢は徹頭徹尾ブレがいないですね。
こうお話を伺っていますと、すごくストイックな印象を受けますけど、アトリエの雰囲気はどんな感じなんですか?
先ほどのお話では、みなさん笑顔でリラックスされているという感じでしたけど。
大和田
アトリエ内にはみんなで食事ができるスペースがあって、手作りのキッシュや焼き菓子をみんなでシェアしたり、とても和やかな雰囲気です。
夏の時期、隔週木曜日の夕方には、お店の前の広場にミュージシャンやフードトラックを呼んで、地元の人たちやフロラックに遊びに来た人たちが楽しめる場になっています。
夏のフロラックは避暑地として人気があって、観光客が多く訪れるんです。
中村
いいなぁ。すごく楽しそう。
大和田
あとは、アトリエ内にデニム生地を使ったビリヤード台やブランコや子供が楽しめるちょっとしたスペースもあります。
そんな環境で、みんなで、次のシーズンはこうしたらいいんじゃない?とか、今年のクリスマスに向けて、こういうアイディアはどう?とか、話し合ったりします。
中村
風通しがいい会社。
大和田
そうですね。
オーナーのジュリアンとミリアムが自社のスタッフとも、地元の人たちともフレンドリーでフラットな関係性を持っていって、みんなと共存している感じがあります。
中村
もう写真から滲み出ていますよね、なんか良い雰囲気が。こんな会社を作りたい、って多くのひとが理想に描くかたちですよね。
こんな職場環境を実現できているのは、やはりリーダーのお人柄が大きいですよね。会社の歴史の厚みも信頼につながっているのでしょうね。
大和田
そうですね。
理想のかたちになっていると思っています。

夏はみんなが楽しめるイベントを開催
フランスの「生きた文化」とともに
大和田
アトリエ・テュフリーは、フランスの エンタープリーズ ドゥ パトリモワン ヴィヴァン ( Entreprise du patrimoine vivant (EPV))に認定されています。
日本語でいうと「生きた文化遺産企業」という感じですね。
中村
生きた文化遺産企業ですか。 それって、具体的にはどういうものなんですか?
大和田
簡単に言うと、伝統的な手仕事や希少な技術を継承しながら、現代に合った形で企業活動を行っているブランドや工房に対して、フランス政府が与える認定制度です。
EPVの称号を得るには、芸術性・技術力・継続性など、いくつかの条件を満たす必要があるんですよ。

手引き(てびき)でパターンを引く
中村
なるほど。
技術と文化をブランドとして守っている、ってことですかね。
大和田
はい、そうなんです。
アトリエ・テュフリーのように地域に根差しながら、長年にわたってクラフトマンシップを継承し、新しい技術革新にも積極的に取り組んでいる企業は、まさにEPVにふさわしい存在かと思います。
中村
そうですね。
日本にも、似たような制度ってあるんでしょうか?
大和田
はい、あります。
フランスのEPVに一番近いのは、経済産業省の「伝統的工芸品産業振興制度(伝産法)」でしょうか。
これは企業ではなく、地域 × 技術という視点で、工芸品を品目単位で認定しています。
中村
なるほど。
例えば、岩手の南部鉄器や京都の西陣織のような。
日本だと人間国宝や現代の名工も聞きますけど、あれはあくまで職人個人の表彰なんですね。
大和田
そうなんです。
EPVとの違いはそこですね。EPVは企業単位での認定ですが、日本のそれらは個人に与えられる称号です。
中村
なるほど。
EPVって、ただ技術がすごいってだけじゃなくて、文化としての価値や、そのブランドのあり方まで含めて国がちゃんと認めているという。
あらためて、アトリエ・テュフェリー、素晴らしい会社ですね。技術を受け継ぎ、雇用を守りながら、時を重ねて磨いて磨き抜いてきたきたブランドの魅力。
それが国に認められたってことですもんね。

熟練の職人が技術を伝えていく
大和田
そうですね。
ありがとうございます。
この認定は会社としても誇りです。
私たちは、「フランスでつくること」に強いこだわりを持ち続けています。
それは単なる生産地という意味ではなく、地域の職人たちと共に歩む精神であり、受け継がれてきた技術への敬意でもあります。
これからも、ニットやキャップ、Tシャツといった異なるジャンルのアトリエと手を取り合い、分野を超えたクラフトのエコシステムを築いていきたいと考えています。
すべての製品がフランスで丁寧に作られていること。そしてその背景にある思いや姿勢が、私たちアトリエ・テュフェリーの「ものづくりの本質」です。
これまでも、そしてこれからも、4世代にわたり守り抜いてきたこの信念を、決して手放すことはありません。
日本でも、まずは京都の時在さんから、私たちのデニムを体感していただければ嬉しく思います。
中村
こちらこそ、たくさんの深いお話を本当にありがとうございました。
アトリエ・テュフリーの哲学や姿勢を、こうしてじっくり聞かせていただけて、あらためてものづくりの在り方を見つめ直す時間になりました。
そして皆さまに嬉しいお知らせがあります。
10月15日、Atelier TUFFERYの四代目オーナーであるジュリアンさんとミリアムさんが、はるばるフランスから京都の時在服飾設計へお越しくださいます。
当日は、大和田さんにも通訳としてご一緒いただき、私・中村とのささやかなトークショーを開催いたします。
・アトリエ・テュフリーの哲学
・ものづくりへの想い
・4世代続くアトリエのストーリー
・日仏のクラフトマンシップの交差点のコラボ
・サステナブルなものづくりや取り組み
・Atelier TUFFERY×TOKIARI 裂織デニム発表
など、お話しできればと思います。
今回のトークショーは、ファッションに関心のある方はもちろん、サステナブルなものづくりや取り組みを考えている方々にも、きっとヒントになるお話がたくさんあると思います。
ジュリアンさんとミリアムさんの言葉を、ぜひ“生”で聞いて感じていただけたら嬉しいです。
たくさんの方にお会いできるのを楽しみにしています。

アトリエ・テュフリー、クラフトの未来へ
Atelier TUFFERY
https://www.ateliertuffery.com/ja
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<トークショウ>
アトリエ・テュフリーの哲学
-ものづくりへの想いと未来-
ゲスト アトリエ・テュフリー
四代目オーナー、ジュアリアン&ミリアム
聞き手 TOKIARI デザイナー 中村
通訳 アトリエ・テュフェリー広報 大和田
日時 10月15日水曜日 13:00-13:30
場所 京都府京都市下京区貞安前之町605
京都藤井大丸 4階
時在服飾設計
Google Map
お問い合わせ
<ポップアップ>
Atelier TUFFERYのデニムをはじめ、
TOKAIRIとのコラボレーションの裂き織りデニム、エプロン、バッグ、キャップ、ラグなどが並びます。
ぜひ、足をお運びください。
日時 10月15日水曜日〜
場所 京都藤井大丸 4階
時在服飾設計
住所 京都府京都市下京区貞安前之町605
藤井大丸
営業 10:30 – 20:00