この写真はドイツの写真家 アウガスト・ザンダー「20世紀の人々」から。本棚から引っ張り出して久しぶりに見返してみたが、やはり格好いいのだ。いつみても彼が一番格好いい。古いのだが、まるで古くない。こんな服いいな、とむずむずする。
服は寡黙でいい。時代に振り回されないタイムレスなもの。それを着るひとの存在が光る服が好きだ。私の場合、この「アウガスト・ザンダー」に強く影響を受けているが、人それぞれ影響受けたものはあるはずだ。今回は、イメージオーダーを始めるにあたり、その影響から生まれるイメージについての話しをしたい。
映画、音楽、写真、、、挙げるとキリがないくらい、素晴らしい作品はこの世に存在する。自分の心の琴線に触れる作品、それに出会ったなら本当に幸せだ。作品を見るたびに触れるたびに、自分の大切な記憶に触れれるからだ。記憶というのは、すごく個人的なものだ。自分が何気なく、こんな服作りたいな、と思うのはいつも記憶と強く結びついている。
幼少の頃、祖父の背中に捕まってバイクで川釣りへ向かう時の森の光は、映画「リバー・ランズ・スルーイット」の世界だった。これは、今作っているB.Dティシュシャツに繋がっている。シャツ型は全然違うが、イメージは一緒だ。その祖父はいつも粋なラクダシャツを着ていたこと。もうひとつ、思い浮かぶ記憶は「汚れた血」のこのシーン。30代の頃、ドニ・ラヴァンに憧れてファッションを真似たものだった。
イメージオーダーのヒントは記憶にある。自分の記憶を見つめてみて感じてみること。あのシーン、あのドキドキ、あのワクワク。
大切な記憶とシンクロする作品。それが自分の感情を揺さぶる。
このドニ・ラヴァンのように。
あなたと対話しながら、一緒にそんなシャツを作りたいと思っている。